シリーズ「AIで開発するコンテンツ&IP」(前編)


【前編】メディアでもここまで来た!

昨年から脚光を浴び始めた生成AI。OPEN AI社が公開した対話型の登場で、メディアでも取り上げられる頻度が高まった。象徴的なのは昨秋の芥川賞。「全体の5%くらいは生成AIの文章」と受賞者が発言したため、いよいよクリエイティブな表現も時代の変化から逃れられないと思った人は多かった。

 

そもそもPCとIP網の進化でマスメディアのインフラは一新し始めた。そして生成AIの躍進は、表現・創造の分野に変容を強いる。マスメディアの存在感は変わらざるを得ないのである。そこで今回は、マスメディアで生成AIの活用はどう進んでいるのかを確認する。

 

生成AIの最前線

我々の質問にチャット形式で返事をしてくれる生成AI。大規模言語モデル(Large Language Model)を使うChatGPT4が注目されている。複雑な文章も瞬時に創り出してくれるので、システムはかなり高度と思いきや、実は原理はシンプルだ。

 

最初の文章に対して、次に何が来るのかを確率的に高いものを接続しているに過ぎない。例えば「むかし昔」と書けば、「あるところに」「お爺さんとお婆さんが」「暮らしていました」と続く。インターネット上の5兆語ほどでトレーニングし、使ってはいけない表現などを人力で学習させた結果だという。つまり最初の言葉さえ入力されれば、自動的に最大確率となる表現が次々に連なって来るように設計されている。

 

その能力は、大学入試や国家試験などで合格するレベルに達しているという。集合知はここまで来ている。ただし真の知性かと問えば心もとない。人名を入れ検索すると、間違った情報が出てくることがある。また平凡な質問に対しては凡庸な回答が返って来る。ネット上で頻出する表現から作成されているので、独創的で卓越したものになるとは限らないのである。

この世にまだ存在しないものや、生み出されていない概念に対しても弱い。システムが開発された2021年より後の情報は前提になっていないからだ。つまり未来予測なども危ういし、経験したことのない問題に対する解決能力もイマイチなのだ。

 

生成AIから起こる問題

それでも生成AIに対する警戒感は強い。米国ハリウッドでは昨春、「仕事を奪われかねない」と映画脚本家らが大規模なストライキを実施した。米金融大手のゴールドマン・サックスは、「世界で3億人の雇用喪失につながる可能性」を指摘したが、実際に生成AIを開発したIT企業のマーケティング部門などで人員整理が行われた。

 

実は生成AI前のITデジタル化では、影響を受けるとされた職種は単純作業が多かった。銀行窓口・税金の申告代行・ローンの融資担当などだ。代わりに教師・心理学者・医者などは影響が小さいと思われた。ところが生成AIの快進撃により、高度な知的作業も危ういと考えられ始めている。通訳や翻訳家・詩人や作詞家・記者やジャーナリストにも影響が及ぶというのである。ハリウッドのストライキは、こうした危機感を反映したものだったのである。

 

一方で生成AIの飛躍に、著作権問題が1つの防波堤になるという考え方がある。ところが議論の余地はここでも残る。確かにネット上の大量の表現が土台になっているが、アウトプットはそのままではなく改編されている。著作物がそのままコピーされれば権利侵害の対象になる。ところが多くの表現から少しずつ“良いとこ取り”した別表現について、権利侵害か否かをどう線引するかは微妙だ。考えて見れば人間の脳の営みも、似たようなことをやっている。生成AIの活動を違法と位置付けるのは、人間の表現活動に直結しかねないという考え方もある。

 

AIとメディア

ちなみに一部の人々が生成AIを危惧しようがしまいが、現実はどんどん進み始めている。小説家が利用し始めた事例に留まらず、各種クリエイターが創作物を投稿するnoteでも、記事執筆のアシスタント機能を提供し始めた。活字メディアでは執筆の自動化・省力化が進み始め、記事の最終クオリティも向上していると言う。

 

人間の能力をゼロから100段階に分けて考えて見よう。50~70レベルの人がAIを活用して10~20高い力を発揮するのは容易だ。特に70以上の人がより高品質の仕事を大量に熟せるようになると指摘する学者もいる。アイデア・切り口・仕上げ能力次第で、高いパフォーマンスが可能になる。

 

映像メディアでも流れは止まらない。早かったのはSNS上にアップされる事件事故の決定的瞬間を捉えたスクープ映像のチェック。テレビ局はもともと人力でそうしたと使用許可などを行っていた。1日3交代で毎日20人以上を投入した局もある。ところがAIが自動的に集め、事実か否かの判定もしてくれるようになった。人間は使用許可や放送で使うか否かなど、対人的な部分だけを担うようになったのである。

 

映像の編集プロセスにも応用され始めた。番宣用ミニ動画の粗編集だ。完成度はまだ改善の余地があるが、編集方針を複数命じて感触をみる分には大いに使える。他にボカシ入れなどの映像加工も、生成AIの導入で10分の1ほどの時間で出来るようになっている。

 

以上のように生成AIは、労働集約型だったテレビ局の仕事の仕方を変え始めている。番組制作やサービス展開の省力化とコスト削減が可能になってきたのである。

 

しかも生成AIにより、新たなビジネス創出の可能性も出てきている。これまでマスメディアは、“1対n”の情報流通を前提としていた。ところが生成AIの活用で、“n対n”サービスの展開が見えて来た。そこでは小額課金でも多く利用されることで大きな収益につながる可能性がある。つまりマスコミだったテレビ局が、新たな業態にも乗り出し、生き残る余地が出て来たのである。

 

 

・【後編】では、メディアがコスト削減から新たな収入増へ、守りから攻めにどう生成AIを活用できるのかを解説します。

・生成AIの具体的な活用法については、全12回のAIワークショップで実際に体験して頂くことが可能です。

詳細はAIワークショップのページをご参照ください。

セミナー『“スポーツ×TV”活性化の道』のご報告


3/13(水)に、次世代コンテンツセミナー『“スポーツ×TV”活性化の道』を開催致しました。
お陰様をもちまして、約50名の方にご参加いただくことができました。
参加者の皆様、またパネリストの方々及び会場設営等ご協力をいただきました皆様、ありがとうございました。

 

(参考)3/13(水)に開催したセミナーの詳細情報は以下の通りです。

 

 

3/13(水)開催
2024年 第3回 次世代コンテンツセミナー
『“スポーツ×TV”活性化の道

<開催日時>  2024年3月13日(水) 16時00分~18時00分
 <会  場> LODGE
東京都千代田区紀尾井町1-3 東京ガーデンテラス紀尾井町
ヤフー株式会社 本社オフィス内 17F(受付は2F)
(東京メトロ永田町駅 9a出口直結/東京メトロ赤坂見附駅 D出口より徒歩3分)
【ZOOMによるリモート参加推奨】
 <登  壇  者> 関西大学名誉教授 黒田 勇 氏
 < モデレーター > 次世代メディア研究所 代表 鈴木 祐司

 

※セミナー会場の「LODGE」は、ヤフー本社オフィス内にあるスペースです。
LODGEはZホールディングスグループ各社と各種企業団体のオープンコラボレーションを目指して活動し、コロナ禍における現在はオンラインイベントの収録配信会場としても活動しております。

 

 

<概要>

テレビ放送をリアルタイムで見てもらうためには、スポーツは最適なコンテンツだ。
しかも野球・サッカーをはじめ、バスケットボール・ラグビー・バレーボールなど地域密着型スポーツは増えている。
さらにXゲームなど新種目に着目すれば、従来にない賑わいを創り出すのも可能だ。

「テレビ放送の他にネットなど新たな発信方法も含め、地域局が出来ることは増えている」と考える黒田教授と活性化の道を考える。

 

セミナー『HPアクセス増作戦最前線』のご報告


3/4(月)に、次世代メディアセミナー『HPアクセス増作戦最前線』を開催致しました。
お陰様をもちまして、約50名の方にご参加いただくことができました。
参加者の皆様、またパネリストの方々及び会場設営等ご協力をいただきました皆様、ありがとうございました。

 

(参考)3/4(木)に開催したセミナーの詳細情報は以下の通りです。

 

3/4(月)開催
2024年 第3回 次世代メディアセミナー
『HPアクセス増作戦最前線』

<開催日時>  2024年3月4日(月) 16時00分~18時00分
 <会  場> LODGE
東京都千代田区紀尾井町1-3 東京ガーデンテラス紀尾井町
LINEヤフー株式会社 本社オフィス内 17F(受付は2F)
(東京メトロ永田町駅 9a出口直結/東京メトロ赤坂見附駅 D出口より徒歩3分)
【ZOOMによるリモート参加も可】
 <登  壇  者> Webプロデューサー 坂根秀和 氏
 < モデレーター > 次世代メディア研究所 代表 鈴木 祐司

 

 

<概要>

企業HPへのアクセス数は、サイト構成やコンテンツの傾向で大きな差が出来る。
特にメディアなどコンテンツが豊富な企業は、ちょっとした工夫で安価に業績を伸ばし、テレビ局なら視聴率向上ほか、ネット配信の再生数・イベント・グッズ販売など放送外ビジネスに好影響を及ぼすことができる。

アクセス数増のための原理を解説し、実際に急伸させた成功例を開示し、実際のメディア企業のHPについて改善案を示す。
視聴者との接点をどう改善するかを議論する。

©2014次世代メディア研究所