お正月の三が日は、スポーツのビッグイベントが目白押し。

160102箱根駅伝スタート箱根駅伝を初め、サッカー天皇杯・ニューイヤー駅伝・ライスボウル・高校と大学のラグビーやサッカー全国大会が連日行われていた。各局もスポーツ中継に多くの時間を割いていた。

普段のニュースは“公正・中立・客観”を掲げるため、各局似たような項目が並ぶ。ところが正月三が日のニュースは放送時間が少ないこともあり、1年で最も局間のニュース差が大きくなる。特に各局の思惑も加わり、全然別のニュースになることがある。

まず元旦。夕方ニュースはNHKが20分、テレ朝とTBSが15分、日テレとフジが10分と、各局普段よりかなり短かった。この日のスポーツでは、NHKがサッカー天皇杯、TBSがニューイヤー駅伝を中継した。毎年恒例のビッグイベントだ。しかしNHKは天皇杯だけニュースにし、TBSの駅伝は扱わなかった。逆にTBSも、駅伝・高校ラグビー等を放送しながら、NHKの天皇杯は取り上げなかった。スポーツ中継がなかった日テレもフジも、天皇杯・駅伝ともに無視した。テレ朝だけが天皇杯を扱い、“公正・中立・客観”の印象があった。

「その差って何?」ともっと呆れるのは翌2日。NHKは大学ラグビー、日テレが箱根駅伝往路と高校男子サッカーを中継した。NHKは箱根と大学ラグビーを取り上げたが、日テレは、箱根で8分強、高校サッカーに4分半投入するも、大学ラグビーは無視した。翌3日には箱根復路と高校サッカーの中継がある。さらに2日夜には箱根駅伝ダイジェストがBS日本で放送される。明らかに番宣を兼ねた戦略とみた。ちなみに日テレだけが中継する高校サッカーについては、どの局も全く扱っていない。

3日目。日テレが箱根駅伝復路と高校男子サッカー、NHKBS1がライスボウル、そしてTBSが高校女子サッカーを中継した。一方ニュースでは、日テレはこの日も、箱根で8分強、高校サッカー3分半と多くの時間を割いた。箱根はダイジェスト、高校サッカーは決勝戦まで中継がある。やはり番宣色が強いニュースだった。日テレ以外は、箱根駅伝とライスボウルを無視しなかった。イベントの話題性から見て頷ける選択だが、TBSだけは自局で中継した高校女子サッカーにも2分40秒使った。しかもニュースの途中で、地上波・BS・CSでの中継告知を入れて来た。日テレ同様、TBSもかなり露骨な戦略と言えよう。

以上のように正月三が日は、大人の事情が露骨に表れる。筆者が知る限りこうした報道姿勢の違いは、2000年7月11日夜のニュースでも大きかった。米国大リーグのオールスター戦の日で、1番イチロー選手のヒットで始まり、最終回を大魔神の佐々木選手が締めた試合だった。中継を担当したTBSは、「ニュース23」の大半をこの話に費やした。他局も同試合をニュース冒頭あるいは前半で大きく扱っていたが、唯一日テレ「きょうの出来事」だけが、後半でちょっと扱っただけだった。しかもイチロー選手・佐々木選手の活躍を、何故か当時巨人軍監督だった長嶋監督に語らせてニュース項目を終わらせていた。 実は前世紀まで、巨人戦中継が強かった日テレ内には、日本で脚光を浴び始めた米大リーグを大きく扱うなという指令が出ていたという。逆に日テレに対抗すべく、大リーグを前面に出す局も少なくなかった。こうした経営の思惑が明確に出たのである。当時「ニュース23」は筑紫哲也氏がキャスターだったが、筑紫氏でも“大人の事情”は無視し切れなかったようである。

ニュースは“公正・中立・客観”を標榜している。しかし現実は記者個人の能力・傾向や会社の経営方針で、そうでもないニュースが出ることもある。正月三が日はその典型のような時期だが、これを“公正・中立・客観”でないと噛みつく人はいない。米国では1987年に既にフェアネスドクトリン(公平原則)は撤廃されている。簡単に言うと、姿勢として求められるものでも、現実的にはあり得ないことを金科玉条のように掲げることは、問題なしとしないということだろう。最近で言えば「放送法違反!」などという恣意的な批判も、全体として何が妥当かの合意があれば退けられることだろう。いずれにしても、理想と現実が乖離し始めている今日の放送について、一度立ち止まって客観視してみる時期ではないだろうか。

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