視聴率が振るわなかったフジ「ワンピース」再放送

視聴率が振るわなかったフジ「ワンピース」再放送

再放送で低視聴率

1月5日は仕事始め。魚市場の初セリ、小売業の初売り、東証での大発会など、夕方のニュースは今年最初のイベントで大賑わいだった。ところがこの日のスポーツ紙では、華やいだ雰囲気とは逆に、暗いニュースが紹介された。フジが年末年始の番組で大惨敗したというのである。「戦わずに惨敗・・・フジの淋しい年越し」と題された記事は、「大みそかにまさかのアニメ再放送で勝負に出たフジテレビ『ワンピース』が、視聴率3.3%で惨敗してしまった」と始まった(日刊スポーツ)。「打倒紅白の番組を“作らない”という、後ろ向きなチャレンジ」「ダイナミックな企画力で他局をリードした時代を知る者としては複雑な思い」など、記事では手厳しい文言が並んだ。

確かに大みそかと元旦のフジは、視聴率が芳しくなかった。アニメの再放送3.3%は、42.2%の紅白に対抗した日テレ「笑ってはいけない」18.7%(1部)の約6分の1だ。TBS「KYOKUGEN」9.0%(3部)と比べても約3分の1、テレ朝「くりぃむVS林修」5.9%(2部)や、テレ東恒例の「第47回年忘れ日本の歌」5.8%にもダブルスコア近く離された。「振り向けばテレ東」ならぬ、“仰ぎ見るテレ東・振り向けばEテレ”だったのである。

近年のフジにとって、大みそかは鬼門のようだ。2010年以降では、3年連続4%台、そして去年の「祝!2020東京決定SP」に至っては2.0%。そして今回のアニメの再放送だ。「もはや勝てない戦に金をかけないとう発想」「“作らない”という選択はかっこ悪く見える」など、記事では厳しい批判が続いた。

ちなみに元旦の夕方6~9時の「オールハワイナイトフジ2015」も4.4%、夜9時~11時半の「鶴瓶のうるさすぎる新年会2015」も3.6%と、在京キー局番組の中で最下位だった。前者は往年の「オールナイトフジ」的なタイトルだが、ここ数年の同局は続編頼みが目立つ。12年秋改編では、90年代に一世を風靡した「料理の鉄人」のリバイバル「アイアンシェフ」があった。90年代末からの大ヒット「ショムニ」のリバイバル「ショムニ2013」が一昨年、01年に全話が30%を超えた「HERO」の続編「HERO」は14年に同局で最も当ったドラマだった。しかし記事は「保守的なチャレンジ」とやはり辛口が続いた。

番組制作というビジネスの視点

しかし冷静に考えると、再放送や続編はそんなに批判されることだろうか。まず全体を俯瞰すると、関東地区では15年ほどでNHKとキー5局の合計視聴率(G帯)は15%ほどパイが縮小している。その中でNHKが一定の数字を獲っているとしたら、民放の獲り分は当然厳しくなっているわけで、経営判断として安全策をとることがそんなに批判されるべきことだろうか。

実は再放送については、「北の国から」が2003年12月16日からの夜帯で5夜連続再放送されたことがある。83~02年までの全ドラマの中から、ハイビジョン撮影されていた分をまとめ、地デジ開始に併せた放送だった。視聴率は13%ほどで飛びっきり高くはなかったが、フジの幹部によると赤字続きだった同ドラマは、この放送で初めて通算で黒字になったという。再放送は制作費が不要だ。権利処理コストと13%の広告収入を比べれば、利益が十分あったと推測される。

明くる2004年正月にも、前年夏クールに放送された「ウォーターボーイズ」が一挙再放送された。この時は演じた役者の何人かが登場してMC的な役割を演ずるという工夫があった。これも一定の数字を獲り、放送としては成功だったと聞いている。

つまり問われるべきは、惨敗であり、再放送とか続編という放送の仕方ではない。視聴率的に華々しくなくとも、収支で見て意味のある結果であれば良しとすべきではないだろうか。それが右肩上がりではなくなった放送業界の、次世代を見越した新しい戦略ではないだろうか。実は当時、フジの幹部がちょっと憚られる表現で、テレビビジネスの課題を指摘していた。曰く「現状は処女ばかりの女郎屋となっているが、二次利用なども含めて勝つ体質に変える必要がある」。売上高至上主義ではなく、利益重視の姿勢を言っていたのである。

今回の年末年始なら、権利処理が可能であれば、01年「HERO」と14年「HERO」の比較文化論的な見せ方は出来なかっただろうか。例えば主人公・久利生検事の14年の変化や、事務官を演じた松たか子と北川恵子を徹底比較するトリビア特番だ。冬クールでヒットした「信長協奏曲」だったら、主要登場人物の視点から各話の重要シーンを振り返るスタジオ番組だって可能な気がする。そもそも同ドラマは今年12月に映画化が予定されている。仮に視聴率が4~5%に終わっても、TBS「MOZU」が有料放送のWOWOW加入者を大量に生み出したように、「信長協奏曲」フリークを数百万人生み出せれば、映画の方で大きな利益につながる。

テレビ番組の批評として、再放送や続編の多用を批判する気持ちは分からなくはない。しかしテレビ局をとりまく環境は80~90年代とは大きく異なる。米国だってテレビ番組は「半年分を制作し、残り半年は再放送」することで、テレビビジネスを最適化させてきたではないか。90年代に筆者が訪ねたカリフォルニアの某独立系テレビ局は、夜7~9時の3時間に、同じ1時間ニュースを3回、生で繰り返していた。キャスターはライブでコメントするが、大半のニュースVTRは使い回しだった。こうすることで、放送1回の視聴率4~5%の番組が3回で15%近くに達し、ペイしていたのである。

ネット・SNS・デジタル録画機が普及し、ダブルスクリーン視聴やタイムシフト視聴の生活者がかなり多くなってきた。テレビの位置づけは、アナログ時代とは一変したと覚悟すべきだ。その時代に合致した番組制作や放送の仕方を、テレビ局も工夫しなければ生き残れない時代。「紅白」や「笑ってはいけない」のように従来と変わらない作り方の番組も必要だが、全6チャンネルがそのままである必要はない。その意味で、フジの年末年始惨敗は、時代に合った新たな制作・編成の仕方を考えるきっかけになったのではないだろうか。不発を指弾する外野の声に惑わされずに、苦境を奇貨として新たな文化を切り拓いてもらいたいものである。現代は「楽しくなければテレビじゃない」だけでは通用しなくなった。「新しくなければテレビじゃない」の姿勢が求められている気がしてならない。

 

One thought on “年末年始フジ惨敗というチャンス!

  1. フジテレビは思い切ったことをしたなぁと思いましたが、やはり惨敗でしたね。
    アニメは子供が見るので、録画して別の機会に見ることが多かったのかもしれません。
    録画視聴率が発表され、評価されるようになれば、番組制作の取り組み方も変わるかもしれませんね。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

©2014次世代メディア研究所