視聴率42.2%の意味

大晦日に放送された第65回NHK紅白歌合戦は、第2部の視聴率が42.2%だった(ビデオリサーチ調べ 関東地区)と、2日の各マスコミに取り上げられた。「前年より2.3ポイント下がったが、7年連続40%台を維持した」という表現が目立ったが、この表層的な報道って本当にどれだけ意味があるのだろうか。

そもそも標本数600の関東地区では、視聴率40%の時の統計学的な誤差は±4.0%だ。「前年より2.3㌽下がった」というのは、完全に誤差の範囲なのである。つまり紅白第2部は38%ぐらいから46%程だったのである。また「7年連続40%台を維持」と言うが、08年以来40.8%・41.7%・41.6%・42.5%・44.5%・42.2%だったから、確実に「40%台を維持」したのは2013年だけ。ちなみに06~07年は39.8%・39.5%だったので、40%台だった可能性もある。

さらに言えば、発表されている視聴率は第2部の平均視聴率だ。つまり午後9時から11時44分までの毎分視聴率の合計164回の平均値に過ぎない。直観的に言えばその2時間45分の間、ずっとNHK総合をつけていた家庭は20%台。残りは見たい歌手のパートのみNHKで、他の時間は他局に回していた可能性がある。しかもその2時間45分間に1分でも紅白にチャンネルを合わせた家は、7割前後だった可能性がある。つまり紅白のつまみ食い視聴世帯は5割ほどに上る。ザッピングやフリッピングしながら紅白を見た、あるいは正月の準備や初詣などの用事があり、一部の時間しかテレビをつけていなかった家庭だ。しかもこうした多忙(?)な方々には、今や便利なデジタル録画機もある。録画再生で見たい部分をじっくり見た家庭も2~3割はあったのではないだろうか。かくいう筆者宅には全録(8chを一週間分全て収録可能なデジタル録画機)があり、大晦日の紅白については全て録画再生で、リアルタイム視聴は皆無だった。

たった一例だが、録画再生だと紅白はこんな見方になる!

実は我が家のテレビ視聴は9割以上がタイムシフトだ。家族構成は筆者が50代、妻は40代、長女10歳、長男6歳。末っ子といえども、テレビ視聴の大半はタイムシフト。「列車戦隊トッキュウジャー」「妖怪ウォッチ」「はなかっぱ」などが主な再生対象だ。小学5年の娘も「名曲アルバム」などのミニ番組を、編成表に頼らず検索で見ることが多い。必ずリアルタイムで見るのは毎朝7時30分からの朝ドラだけ。しかもこれはBSなので、もし我が家が視聴率モニターなら、地上波局の視聴率には全く寄与しない家庭となる。

さて紅白歌合戦が放送された大晦日だが、何かと準備の遅い拙宅では8時過ぎにようやく一家団欒がスタート。おもむろにリモコンを取り出し、まずは7時15分の紅白オープニングから再生し始めた。ところが冒頭はタモリと黒柳徹子のゆったりトーク。始まって30秒で、子供達は「つまらない」と非難轟々、日テレ「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!大晦日年越しSP」にタイムシフト・ザッピング。ところがこちらのオープニングは、約30秒に14~15カットが積み重ねられる超ハイテンポ。小学生にも40~50代にも、あまりに強い刺激のオンパレードに、やはり30秒で食傷気味。全録を備え選択肢が増えた家庭では、生視聴の時以上にオープニングに対する選球眼は厳しくなっているのである。

大晦日の2大番組に躓いた我が家は、ここでEPGと睨めっこ。するとEテレで「地球ドラマチック エトワールをめざして~オペラ座バレエ学校の子どもたち~」が目に飛び込んだ。バレエを習っているお姉ちゃんが俄かに色めき立ち、彼女の強い主張で視聴率では限りなく※印のEテレへ。ところが末っ子はここで脱落、NITENDO3DSへと“テレビ離れ”。残り3人で30分ほど専念視聴した結果、この番組はDVD「パリ・オペラ座 バレエ学校の妖精たち~エトワールを夢見て~」と似ているとなり、ここで再び紅白に戻ることになる。時すでに9時近くだった。

ここで紅白に戻ったが、再生速度は基本が20倍速。最初の対戦のHKT48やSexy Zoneでもノーマル再生になることなく、最初に普通に見たのは7時30分頃の審査員紹介。これはもっぱら筆者の業界的関心の成せる業だった。

で結局、本格的に内容を見たのは直後の妖怪ウォッチ第一部。子供たちの要望によるものだが、彼らは「妖怪体操第一」を夢中で踊り、テンションは一挙に急上昇。しかもリクエストにお応えして、この部分は2回も再生する羽目になった。以降、順速で見たのは「マッサン」の3人が登場するクリス・ハートの「糸」、羽生結弦のスケート映像が出る徳永英明「花は咲く」、そして妖怪ウォッチが再び登場する嵐の「A・RA・SHI」。ここまでで末子は疲れてしまい、筆者が彼を寝かしつける役・・・結果は一緒に爆睡。妻も大掃除などで疲れたようで、まもなくダウン。結局お姉ちゃんは、Eテレ「地球ドラマチック」に戻って、全部を見てから寝たそうである。

大晦日当日はここまでだが、紅白のタイムシフトはここで終わりではない。翌朝、ネットで紅白の評判を調べた筆者は、続きを録画再生し始めた。チェックしたのは、第2部冒頭の「花子とアン」の紅白用ドラマ・吉高由里子のリアクション・綾香「いじいろ」・中園美穂インタビュー、ダルビッシュが髪を刈られたゴールデンボンバー「女々しくて」、ニューヨークからのイディナ・メンゼルと神田沙也加の「生まれてはじめて」「Let It Go」、薬師丸ひろ子「Woman“Wの悲劇”より」、中島みゆき「麦の唄」、美輪明宏「愛の賛歌」、ネット上で最も意見が飛び交ったサザンオールスターズ「ピースとハイライト」「東京VICTORY」、そしてオオトリの松田聖子「あなたに逢いたくて~Missing You~」。

それぞれネットには様々な意見・感想が寄せられていた。全録があると、こうした意見の中の気になる部分は、全て自分の目で確かめることができる。特にサザンオールスターズ桑田佳祐のチョビ髭や、歌われた2曲の意味などは、リアルタイム視聴では背景や意図が忖度できずに感動し損なったかも知れない。今回の紅白は「歌おう。おおみそかは全員参加で!」がキャッチフレーズになっていたが、ネット上の多くの意見を受けてタイムシフト視聴することで、この言葉の意味が深まったと感じた次第である。

莫大なお金と手間暇と才能を投入して制作する紅白歌合戦。全てを見ると4時間半は長すぎるが、見るべきパートは確かに少なくない。それらを的確に網羅できる録画再生視聴の素晴らしさを、紅白は改めて思い知らせてくれた番組だったのである。

蛇足ながら元旦の午後、筆者はTBS「KYOKUGEN2014 豪華アスリートが挑む極限対決7連発」を録画再生した。真剣勝負が幾つも登場する当番組は、同じ録画再生でも順速で見る部分が多く存分に楽しめた。視聴率こそ一桁に終わったが、録画再生向きの番組だったと感じている。TBSはドラマもそうだが、こうした見応えのある番組が少なくなく、結果としてリアルタイムではなく、タイムシフト視聴に流れる率が高い気がする。この辺りは改めて分析してみたい。

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