日テレ三冠放送という枠組み内で絶好調

2015年が始まった。メディア界はこの1年、どう変化するだろうか?新しい1年を展望する前に、まずは去年を振り返っておきたい。

2014年は日本テレビが主役の1年だった。去年末、同社ホームページに2014年の年間三冠王を獲ったことが発表された。「おかげさまで日本テレビは、2014年 年間視聴率(13年12月30日~14年12月28日)で、全日・プライム・ゴールデンの全3部門NO.1を獲得いたしました」。ビデオリサーチの関東地区世帯視聴率で、全日(6-24)が8.4%(13年は8.0%で1位)、プライム(19-23)12.5%(13年11.9%2位)、ゴールデン(19-22)12.6%(13年12.0%2位)だったという。

勝因として同社が挙げたのが、「この1年はそれぞれのレギュラー番組が本当に頑張りました」「番組を楽しんでもらうにはどうしたらよいのか、それぞれの番組が真剣に考え努力した結果が、日本テレビを楽しんでいただく習慣となり、多くの皆様からありがたいご支持をいただきました」だった。実はこの発言は、筆者が業界誌『B-maga』12月号に掲載した小杉善信専務取締役のインタビューに詳細が記されていた。「視聴者の中に体内タイムテーブルが自然と生まれることが望ましい」と題したインタビューの要点を紹介すると、以下のようになる。

日テレの強さの秘訣については、「ここ2、3年で言えば、タイムテーブル、レギュラー番組を大事にしてきたことが要因」「1週間の基本番組表は、いわば視聴者と広告主に対する“お約束”です。このお約束がきちんと行われているからだと思います」という。他局の編成は近年、期末期首以外でも2~3時間の特別番組が多くなっていたが、このやり方は短期的に数字をとっても長期的にはマイナスに働く。日テレはかつての巨人戦中継でそれを学んでいたために、レギュラー番組で安定した視聴率を稼ぐことを優先した。カンフル剤には手を出さなかったのである。その典型が、日曜17時30分の『笑点』から22時30分『有吉反省会』までの盤石な並びだ。5時間半で軒並み二桁を記録し、20%前後の高視聴率が出る番組も少なくない。わずか1日で1週間平均で他局を圧倒していたと言っても過言でないくらいの勢いだった。

もう1点日テレは今、広告収入が絶好調だ。94年から10年連続三冠王だった頃には、視聴率トップでも広告収入でフジテレビの後塵を拝していた。それが14年度は、視聴率に並び広告収入でもトップを窺う勢いとなっている。「世帯視聴率、個人視聴率ともに広告主のニーズを満たしており、今が両面で一番良いバランスだと思います」というのである。1980年代以降フジはF1に強い局として君臨してきた。これ対抗して、10代と随伴視聴する40代前後の層を狙う番組を開発して来たのが功を奏したのである。

 

放送という枠組み外での挑戦

同局は2013年11月に、「日テレJoinTVカンファレンス2013」を開催した。その席で同局は、「O2O2O」というセカンドスクリーンを絡めた新戦略を発表した。その場にスピーカーとして招待された筆者は、同局の方向を「他にやるべきことが沢山ある!」と批判し、司会者を困らせてしまった。もはや一昨年のことだから鬼も笑えないエピソードだが、その2か月後に筆者は不明を恥じる思いを味わう。

筆者が言いたかったことは、「ソーシャル×テレビの対象者は実は一部に過ぎない。それより大問題は急増するタイムシフト視聴。日テレはソーシャルテレビで頑張っているが、タイムシフトにはどう対応するつもりか?」だった。ところが2か月後、同局は「日テレいつでもどこでもキャンペーン」と銘打った人気番組の見逃しサービスを始めた。録画再生視聴に対抗して、無料のVODサービスを数か月前から準備し、民放で初めて本格化に乗り出したのである。

同サービスは7月には、放送時とは異なる動画CMを付け始め、ビジネスとして成立するか否かのトライアルに変わった。録画再生では大半のCMはスキップされてしまうが、VODでのタイムシフト視聴ならCMは飛ばせない。一定額以上の単価を付けられれば、従来の広告収入以外の収入の柱に育つ可能性が出てくるのである。

同局は4月からhuluの運営にも乗り出していた。月額定額制で見放題となるVODサービスである。これで同局のVODサービスは、AD-VOD・S-VOD・T-VODと全ラインナップが揃い、現状の広告モデルにとってマイナスが大きい録画再生視聴に対応して行くことになる。

この放送という枠組み外での挑戦についても、小杉専務は言及していた。「まずは、違法動画配信に関しては、徹底的につぶしていかなければなりません」と、VODがテレビ局の得べかりし利益を毀損する違法動画対策であることを強調した。次に「AD-VODはPC、スマートフォン、タブレットと端末や場所を選ばずに視聴できます。ここが重要なポイント」と、視聴者が番組を見る端末がTVに限定されず、視聴機会が大幅に拡大するメリットを挙げた。そしてタイムシフト視聴が増え、まず苦しくなることが予想されるローカル民放対策として、「huluで配信し、マネタイズできるようにしていくこと」で新たな収入の道を拓こうとしていると言う。

日本テレビは1953年に民放初のテレビ放送を開始した。以後、テレビCM、カラー放送、海外映画の日本語吹き替え放送、音声多重放送、番組マーケティング、フライング編成、JoinTVなど、さまざまな「日本初」を実現してきた。一昨年に開局60年を迎えた同局は、「日テレは、もう一度、テレビをゼロから。」と宣言し、「日テレ」のロゴを「ゼロとテレ」の文字で組み合わせた新デザインに変えた。このパイオニア精神が、どこまで新たな境地を切り拓くのか。次世代メディア研究所はこうした挑戦の中から、次の時代のメディアの在り方を考えて行きたいと思います。

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